新卒一括採用の是非

茂木氏が述べていることは素朴過ぎて取り上げる価値は無い。
内田氏のはおもしろい。若者に選別の恐怖を与えるな論。
日本の人事システムについて

しかし若者は20年何かをやってきたわけである。今更選別がよくないなどと甘ちゃんじゃないか。選別に耐えられないようではお前何してきたんだこの20年という話になる。「ケータイを持ったサル」の正高信男あたりがネオテニー論を持ち出して騒ぐだけだ。
新卒一括採用は悪だから廃止すべしといっても、廃止されて一番困るのは当の若者だ。新卒一括採用がなくなればアメリカやヨーロッパのように若年失業率は跳ね上がる。経験者たちと同じラインで就職活動するわけだから当然の帰結。若者が負うハンデは消えることはない。
新卒一括採用がなくなれば、卒業と同時に就職しなくてもよいということになり、大学三年、四年と学習を積み重ね、卒業後も院に行ってさらに重ねたり、放浪やボランティアやアルバイトをして社会的見識を深めて、それから改めてさらにパワーアップした自分で就職活動に臨む。何年もいろいろとやっていれば、自分の本当にやりたいことも見つけられる。雇用のミスマッチも減る。いいことづくめかもしれない。
ベストアンサーだろう。金持ちの子供にとっては。
日本の学費は半端ない。大学卒業時点で親はもうふらふら。老後の蓄えも全て使い果たしたに違いない。この上子供が大学卒業後もすぐに働かないとなれば、さらなる養育費が発生する。もはや耐えられない。卒業後も自らを高める余力があるのは結局金持ちの子だけだ。貧困な大半の子は働かざるをえない。でも新卒一括採用がない。何かの専門能力を高めなければならない。でも仕事につけないのだから専門能力も高まらない。じゃあアルバイトでもするしかない。アルバイトで生活していくには正規労働者の1.5倍は働かないといけない。結局働きづめでいつまで経っても貧困から抜け出せない。
新卒一括採用は若者へのくもの糸だ。最大公約数的に若者を社会へと接続できている。これは結構うまく運用されているシステムで、はっきりいってそこから漏れた奴らが悪い。一回戦で即効負けておいて敗者復活チャンスをよこせなどとはおこがましい。
内田氏はいう。若者の潜在能力を潰しているのはまずいと。彼らの伸びしろを重んじろと。これには強い違和感を感じる。なぜなら、企業にとって採用する若者が優秀であるか能力が高いかどうかなど、一切関係ないからだ。
本当に優秀な人材が欲しいなら新卒一括採用などしない。中途で一本釣りするはずだ。企業は優秀な人材なんか要らないのだ。本心から。必要なのは人材である。材木という意味で。手足が生えた棒が欲しいのであって、それには資材置き場(大学)から定期的に調達するのが効率がよい。
どうして棒でよいのかといえば、大半の企業のやっていることは、どんなに無能な人でも簡単に出来ることばかりだからだ。どんな人間にでも出来るのに、わざわざ選別をしてくれているのだから、むしろ企業は良心的といえる。採用活動自体が、祈祷的な儀式なのだ。実際的意味も本質的意味も何もない。
新卒一括採用がなくなれば企業は困るはずだ。欲しいのは木の斧なのに、やってくるのは銀や金の斧なのだ。オーバースキルであり、そんな奴を採用したら現場ですでに働いている木の斧たちが不安や恐怖に怯えるだろう。内田氏は若者に恐怖を与えるなというが、それは既存労働者たちを恐怖から守るためのやむをえない措置なのである。
大学で学ぶ内容は労働とどんどん剥離しているといわれて久しい。このような現状を変えるにはどうすればよいのか。どうすれば若者の幸せな採用と労働がありえるのか。
今の社会では無理である。大学を出た人が社会に出て労働するというスキームでは。何度もいうが企業のやっていることが簡単すぎるからだ。試しに小学校を卒業した奴を採用してみるといい。大学卒業者と遜色ないはずだ。必要な知識も技術もそれで足りるからだ。
方法はたったひとつ。大学での仕事を増やすしかない。教授や助手だけでなく、何らかの勉学に励むものたちをそれ自体職業とするしかない。各分野の大学に籍を置き、定期的に論文なり発表していれば公務員並の待遇を与えるような環境を作るしかない。そうすれば大学と職業は直線でつながる。
社会人を見てみるがいい。何にもやっていない。人類として何一つ未来へ残していない。飯食ってウンコしているだけである。働く豚である。飛べないからただの豚だ。人類の進歩という観点からして、大学で勉学に励んでいる方々の足元にも及ばない。どっちが人間として価値があるかといったら大学の方々であろう。既存社会人はホロコーストにでもいってもらってかまわない。
人間のための労働はとっくに失われた。今あるのは労働のための労働ばかりだ。アメリカの医者は勤務時間の大半を患者との対面でなく医療保険事務に追われているらしい。あんまりだ。
大学は増えすぎたという。それが若年失業者の増加要因でもあると。だったら大学が学生を一括採用してやればよいではないか。学ぶことは労働なんかよりよっぽど大事なことだ。もっと評価してやるべきではないか。
必要なのは豚のエサではない。人類の未来なのだ。