夜中に部屋で恋愛小説を読みながら、妻のことを思う。妻のことを想って、何度も失恋したみたいな気分になる。
ラスコーリニコフみたいに地面に頭も手も投げ出して、すべてを彼女に委ねて、自分の存在を消し去ってしまいたい一歩手前くらいまで来ている気がする。
何がきっかけだったかよくわからない。妻の美しさに突然気づいた。表現力の鍛錬を怠っているのが祟る。愛の行き先に文字を選べないならそれはもう行き先がなくなってしまう。