2010.08.16 18:20

荒川智則が最初の画面をコードレビューを突破できるくらいまで完成させた頃、先輩から飲みに誘われた。居酒屋でおごってくれるということで、いろんなメニューを頼んでみた。先輩は終始ニコニコしながら、いろいろな話をしてくれた。先輩は奥さんと子どもが一人いて、三十年ローンを組んで家を買ったからものすごい大変だよと笑っていた。プログラマの給料はそんなによくないから、その大変さは理解できた。先輩の履歴を聞かせてもらった。昔はコピー機の技術者をやっていたらしい。異動があって客のクレーム処理と機械の客先メンテナンスの部署になり、そこで強いストレスを受けたと言っていた。会社の不備で、機械にマニュアルや資料が付属していないことが多々あった。問い合わせが客からあっても、客の手元にある説明書と同じレベルの資料しかこちらにもないような状況だったと笑っていた。だんだん精神的に追い詰められて、やめることになったらしい。そして趣味でやっていたプログラミングを仕事にしようと、地方から今の会社の求人を見つけて応募したらしい。そのときすでに先輩は三十歳。その年齢からこの業界に新規参入ということで、それなりに大変だったようだが、なんとか乗り越えて今があるということだった。ずいぶん奥さんの年齢が若かったのでどうやって知り合ったのか聞くと、ネットでのやり取りで知り合ったそうだ。長い間遠距離恋愛をして、結ばれたらしい。ちょうど先輩がプログラマになる時期に。単身赴任しているときに妊娠が発覚して大変だったよと言っていた。笑いながら子どもの写真を見せてくれた。子どもはいいよと笑っていた。荒川智則は自分に子どもができるなんてことは信じることが出来なかった。