2010.08.16 18:20

マンションに着いた。ワンルームマンション。部屋はがらんどうで、うっすらとホコリがつもり、西日が射していた。部長は荷物の中から青いカーテンを取り出し、まずはこれを取り付けようと言った。カーテンはプレゼントしてくれるらしい。部長の家で余っていたやつらしい。その青いカーテンは、今も荒川智則の部屋の窓にかかっている。次に、照明器具を取り付けることになった。会社の経費で少し前に荒川智則が買って来たものだった。天井に手が届かず、足の土台になりそうなものもないので、部長が馬の姿勢になり背中に乗るように言い出した。荒川智則は肉体派遣と旅のせいで足がとても汚れていたので、とんでもございませんと拒否した。かといって荒川智則の体では部長を支えられそうになかった。部長は思案したあと、玄関の靴置き場の中を分解して土台になっていたベニヤ板を数枚取り出し、組み合わせて土台にした。それに乗って照明器具を取り付けた。スイッチを入れて部屋が明るくなる頃、外はもう暗くなりかけていた。部長はシャワーカーテンもプレゼントしてくれ、ユニットバスなので便器と風呂を仕切るためのカーテンとして取り付けてくれた。部屋には部長からもらった寝袋と最低限の荷物だけが置かれていたが、それでも部屋らしくなったと、荒川智則は少しわくわくする気持ちを覚えた。部長に礼を言い、一人残された部屋であれこれ考えながら、寝袋で眠った。部屋にはエアコンが始めから取り付けられており、かび臭い空気を排出していた。