2010.08.16 18:20

派遣先での面接はもう年の瀬も近い寒い時期で、荒川智則は面接直後に帰省をした。なぜか社長が実家の両親に挨拶をしたいと言い、一緒に帰省することになった。これから預かることになるから安心して下さいと両親に伝えたいということだった。それと荒川智則の出身校や高知のめぼしい大学や専門学校を回りたいと。人材発掘がしたいといういことらしい。荒川智則は知っているめぼしいコンピュータ系の学校名を挙げ、時間の都合上回れそうなところを紹介することになった。その頃荒川智則は会社のオフィスで寝泊りしていた。日雇い肉体派遣の仕事で日銭を稼ぎながらの生活だった。毎日ネットカフェではお金がたまらないし体力的にきついだろうということで、部長と社長で相談して、営業時間後のオフィスで寝泊りしてよいということになった。荒川智則は信じられない思いだった。まだ派遣先も決まっておらず試用期間も始まっていない初対面の不審な高知から放浪してきた若者をオフィスに一人で寝泊りさせるというのだ。部長からフロアのセキュリティカードを渡され、入り口の施錠のやり方、夜遅くにビル全体が施錠されたときのロック解除のやり方を習った。部長はプログラマ時代に自分も使ったという高級寝袋を持ってきてくれ、夜はこれで寝るといいとのことだった。暖房も明かりもつけっぱなしで問題ないと。オフィスがずいぶん広く、夜景が綺麗で、不思議な気持ちで寝袋で眠った。