夫婦でホームレス

京都駅で野宿しているとき、男女のペアでホームレスをしているのを見かけた。駅前のバス乗り場に長い椅子の列があり、そこがホームレスの寝床のひとつになっていた。もう季節は冬の一歩手前で、夜もふけてずいぶん寒い。その男女は隣り合わせで寒そうに椅子に座っていた。ぴったりくっついて寄り添うというよりちょっとだけ離れて座っている。逆に強い絆を感じる。私は少し離れた椅子に座っていた。本当に寒い。椅子に張り付いたお尻から熱が退散していく。
道路を挟んで向こう側にはコンビニの明かり。ちょうど椅子に座るとコンビニの方を見ることになる。コンビニの扉は小刻みに客を回転させている。自転車でぶらりとやってきた学生風の客が寒そうに手をこすって店に入る。自動ドアから漏れる暖かい風が見えるようだった。私は麻雀で少しは勝っていたので、「なんかお酒でも買ってきますよ。なにがいいですか?」と男女に聞いた。男女ははにかんだように笑ってくれ、やんわりと拒否された。人がせっかくおごってやろうというのになどと気分を害した。今から思えば適当に買ってから渡せばよかった。
時計の針が風の音にかわったように、しっとりと風はやまない。しばらくするとやくざみたいなおっさんも来て、若くて動けそうなホームレスを漁っているようだった。治安はあんまよくない。
男女はいつの間にかいなくなっていた。今夜はどこで眠るのだろうか。どうか二人でぴったり寄り添って眠って欲しいなと思った。
結婚するならホームレスになっても離れないでいてくれる人が良いななどと思いつつ。