商店街や病院内で飾られる短冊。まだ覚えたての漢字や、やけに堂々とした平仮名で書き付けられた願い、思い。最後は、どうか叶いますようにと川へ流される。不思議なことに、子供の頃何を願って短冊に託したかまるで覚えていない。
たまたま女優志望の若い女性のブログが目にとまる。厳しい舞台での練習の日々。弱音を吐きながらも、不安に押さえつけられながらも、なりたいなりたいと夢で締めくくる。彼女もきっと、子供の頃何を短冊に記したか覚えていないだろう。
まるで短冊に書くように、今日もたくさんの日記がアップロードされている。短くて歯切れ良くて、きっと明日には忘れてしまいそうなくらいまぶしい夢をまぶす。願うたびに遠ざかる。短冊は流れてゆくことしか定められていない。忘れるために書く。薄皮をはぐように。
あの短冊に書かれた願い事は何だったのだろう。そんなものどこにも書かれていなかったのだと気付くまで。探し続けるしかないのだろうか。