東浩紀氏がカッコいい
ところで歌野晶午の「密室殺人ゲーム王手飛車取り」を読んだ。期待していたがネタもオチも「六枚のとんかつ」レベルだった。しかしこれは単なる布石だったようで、続く「密室殺人ゲーム2.0」にはぶったまげた。この本はしょっぱなにweb2.0の説明がある。読み進めると、そう来たか!とひざを打った。ありそうでなかったメタトリック。歯噛みしてる作家も多いんでは。この作品は三部作のようで、最終巻が楽しみでならない。少し前に「どうしてラノベ層はミステリになじめないのか。情弱?」みたいな話があった。この密室殺人ゲームを読んでおもしろいと思う心性こそ原因だろう。この本の基本設定では、ビデオチャットを介して互いをハンドルネームで呼び合うミステリ同好会のメンバが毎回交代で、無辜で無関係な人間をバラバラにしたりして殺して、トリックを仕掛けて、残りのメンバに出題して解答を競うという不謹慎なものだが、この不謹慎さはラノベを読んでいるようなピュアな人たちには受け入れられないだろう。これを読んで気持ち悪いと思う人も多いのではないか。一緒に飯を食ったり飲んだりするような人間性の関係の方がよっぽど気持ち悪いと思うのだが。私は中学生のときに自己紹介で完全犯罪が夢ですなどと言ったことがあった。部屋のクレセント錠に糸を通して外から鍵をかけて悦にいったりしていた。ミステリを愛する人間は、けっして物語として楽しんでなどいないと信じたい。そうではなくて、できうることなら、自分の考えたトリックを使って、誰でもいいから殺してやりたいと思っていると確信している。ただトリックのためだけに消尽されていく尊い人命とやらをうすら笑ってやりたい。それこそミステリの本質ではないか。人が死ぬことを楽しんでいる。ミステリを読むのはそういう人間である。だからラノベを読む層とは決して重ならない。