古い音楽

初めて聞いたときにビビっと体表がしびれたようになり、中毒のように何度もどこでも聞き、実音がなくても再生できるようになる。苦境に陥るときは脳内で再生して鼓舞する。ドラマのクライマックスでテーマソングが流れるがごとく自分だけのテーマソングをひっそりとしのばせる。しかし人の世の平和なこと。その曲が必要になる機会がそうそうない。数年経ってたまたまネットで流れてたりする。恐竜の化石から色がなかなか復元できないように、もうよくわからない。テトリスなのだ。かつて心の隙間を埋めてくれたものは。埋めたことさえ記憶されないまま消えている。画面が埋め尽くされないように。必死に消していく。