子供を抱っこした

そろそろインフルエンザ疑惑も大丈夫だろうということで一週間ぶりに見舞いに行ってきた。子供はまだNICUだが、保育機からは出て、赤ちゃん用移動式ベッドに乗っかっている。
体重は2000gにはまだ届かないが、順調に増えているようで、一日20gほど増えているらしい。今週中には退院できるだろうと説明があった。
最初は怖がっていたが、看護婦に言われて仕方なく抱っこしてみた。約2kgだからもう少し重いのかと思ったら綿みたいに軽かった。落としやしないかと怖かった。抱っこしてじっと顔を見つめていると、寝ていたのがいつの間にかまぶたがむずむずと動いて、目が少しだけ開いた。黒目がちな目と合って、金縛りにあったような錯覚に陥る。かわいいと思った。
妻が子供を風呂に入れた。直前に入っていた別の子供はひどく泣いていたが、うちの子は泣きそうな顔はしているものの泣かなかった。雑魚ではないようなので少し安心した。風呂の底がずいぶん深いため、左手で頭を支えて体を浮かべながら、右手で頭やら手やら背中やらを洗っていた。赤ちゃんは素っ裸にすると不安になり泣く傾向があるらしく、入浴中も一枚布のようなものを軽くかけていた。俺にもやるように看護婦から指示が飛んできたが、全力で拒否した。あぶなくて出来るわけない。支えている手を外せばおぼれてしまうような環境なのだ。すわっていない首を支えるのはあまりにも怖い。
入浴が終わり、オムツやらガウンを着て、授乳の時間になった。腹が減っているらしく、手をばたばたさせて乳首を捜しているようだった。一度吸い付いたきり、30分ほどずっと口を動かしたり休んだりしていた。
授乳が終わったあと、結局片方の乳首からしか吸っていないため、もう片方から乳を搾る必要があって、ビンに絞っていた。定期的に絞らないと、固くなって痛いし次の出が悪くなるそうだ。
その間子供を抱っこしていた。乳首から口をはなしたあと、あっという間に寝てしまっていたが、またじっと顔を見つめていると、むずむずとしてまぶたが開いた。しばらく観察していると、けいれんのような動きをし出した。やばいんじゃないかと思ったが、直後にぶりゅという音がして、どうやらウンチをしたらしい。父親に対して敬意は持っていないようだった。
森博嗣は「自由をつくる 自在に生きる」の中で、作家になった理由の一つとして、自由になりたかったからといっていた。そして、妻をもっと自由にしてあげたいと思ったとも書いてあった。公務員の給料では安定はしているが自由は遠かったようだ。どうすれば自由にしてあげられるのだろうと思った。もっと金が欲しいと思った。金持ちなんて軽蔑していたしなりたいとも思わなかったのに不思議なものである。