たこ焼きを買って買える途中の公園のベンチに、休日だというのにスーツをぴっちりと着込んだ50代とおぼしきメガネをかけた男性が座っていた。会社のデスクというわけでもないのに背筋をまっすぐ伸ばして手帳に書き込みをしていた。奴隷という言葉がぴったりだと思った。公園にはボールを追いかけて走り回る子供もいた。背筋を伸ばしたら人間はおしまいだ。「即戦力に頼る会社はダメになる」という新書を読んだ。まえがきから派遣を奴隷だと断言していて小気味よかった。しかしそれだけで、内容はぺらぺらだった。金返せ。最近労働に関する新書がずいぶん増えたが、テキトーなものも多くなった気がする。大抵のものは買って読むようにしているが学者くずれの日銭稼ぎに利用されているようで腹が立つことが多い。いくつか興味深いことも書いてあったので抽出すると、転職するときにはプロ野球選手みたいにFA宣言して転職活動をすればよいという提言があった。本当に有能な人材なら条件改善と共に引き止められる可能性があり、会社に黙ってこそこそ転職活動するよいもメリットが大きいというのはうなずける。顧客とのやり取りをメールで済ましてしまうから電話でやり取りしたときとは違い、情報が周囲に伝達されずに損失しているというのもあった。これまでは声によって半強制的に漏れ出していた情報がITによってトンネル化されているという指摘だった。これもうなずける。俺も普段から仕事上の見解や作業上のtipsなんかを直接声でするようにしている。俺は声が無駄にでかいので、基本的には知識をひけらかすことが目的だが周囲の技術向上に貢献しているはずだ。人に質問するときにやたら小声でしているやつらがいるが、そういうやつは無能だ。自信がないのだ。質問をでかい声でしていれば聞いた相手が知らなくても誰かが答えてくれたりする。この本の趣旨の一つは、即戦力に頼りきりじゃなくて新人からきちんと育てましょうみたいだが、ずいぶん悠長な話である。新人が一人前になるには10年かかるとか書いてあった。確かに周りを見ていると、こんなレベルの奴らが一人前になることは一生ないなと思える。この業界10年たったらもう30を超えているわけである。そんな歳に一人前になったって賞味期限切れである。腐っている。優秀な奴ははじめっから優秀だし、無能なやつは最後まで無能だ。ここらへんは他の業界とは違うのかもしれない。労働の本はずいぶん読んだが、どうでもよくなってきた。そんなものに拘泥していても幸せにはならないだろうなという思う。ネット上の記事もどうでもよくなってきた。情報が希釈化してきた感が強い。スライムばかりというか。