「こんなに静かな誕生日はこれが最後だね」と妻に言われた。少し考えて腑に落ちる。私は自分で言うのもなんだが超クールである。精神状態の状態遷移は冷静と立腹の二つしかない。冷えてるかキレてるかどちらかである。来年からは賑やかな誕生日になるのだろうか。駄々をこねるクソガキをなだめるだけで一日が暮れていくのだろうか。ろうそくの数は放っておいても年々増える。しかしテーブルの椅子の数はそうではない。生きることは難しい。家族をつくることはもっと大変だ。数年前、雨に打たれながら夜の山道を歩いた青年が描いた青写真をキャンバスに写すまで、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。あの頃の私は何も持たなかった。空に伸ばす手さえ持たなかった。今はどうだろうか。詩人になるのは素敵なことだ。父親になるのはもっと素敵だ。