今日はお前らに必殺技を伝授してやろう

これは墓場まで持って行こうと思っていたとっておきのワザだ。俺も初めてこいつに気付いたときにはニュートンもこんな気持ちだったのかと思い至ったような気分だった。あれ?ニュートンの話はでたらめだったっけか。帽子あるだろ?ジャイアンツのマークとかついた普通のじゃなくてさ。内田康夫サスペンスの浅見光彦がかぶっているようなやつさ。あれをさ、めいいっぱい深くかぶるとさ。自分の足元しか見えなくなるんだ。でさ、この状態ならさ、他の人間の顔見なくて済むんだよ。ためしに繁忙期のスーパーとかでやってみ?すげぇぜ?それまではさ、手をつないだカップルとかさ、手をつないだ親子とかさ、すっげぇきれいな女性とかさ、そういうのが全部目に飛び込んできて辛かっただろう?でもさ、これをするとさ、そんなの全部関係なくなるんだ。そりゃ視界が狭くなるから多少歩きづらいけど、そこらへんはかぶる深さを調節すれば問題なしだ。おまけにあんた自身の顔も同時に隠せるってわけだ。俺はこれをプロキシキャップと名づけた。ひどいネーミングセンスだ。でもくだらないと思うかもしれないけど、ほんとにすごいんだって!現実世界で匿名性が得られる手段ってこれくらいしか今は思いつかない。