「原発はなぜ危険か」読了

原発はなぜ危険か」のあとがきより引用。心にしみる。

原発に関して決定的だったのは、故シェフチェンコ監督が撮影したチェルノブイリ原発事故の記録映画だった。
一般公開に先がけて、ソ連から送られたばかりの未編集のビデオを見る機会があった。写真集「チェルノブイリ・クライシス」(竹書房)の写真一葉一葉にキャプションをつけるためである。その作業のため、何度も何度も画面を食い入るように見た。爆発とともに炉心に埋まり遺体すら出てこない原発技師の写真を前に嘆く母親。生まれ育った農地と家を追われる農夫たち。涙なしには見ることができなかった。瓦礫の山のように崩壊した原発原発の設計に携わっていたとき、このような情景は想像すらしなかった。大きなショックだった。もはや、原発は合理的に弁護する対象ではないと思った。

著者の田中三彦氏は元原発の圧力容器設計者である。技術者がこういう思弁に陥るしかなかった原発というものを、絶対に許すことは出来ないと思う。
今も原発周辺では高放射能により火葬も土葬も移送も出来ない腐乱死体が散乱している。死体の家族たちはどんな涙を流すのだろうか。その涙にさえ放射性物質が含まれているだろう。私たちは絶対に許してはいけない。原発をその推進者たちを、東電を、東芝を、日立を、GEを、国を、そして何よりも日本人を、私たちの隣で今も呼吸している人々を、愛する家族を、この国で生きる全ての人々を、何よりも自分自身を、絶対に許していけない。原発事故を起こしたのは私たちなのだから。