2010.08.16 18:20

新規参入テスター四人は、せっかくの初対面ながら、ろくに会話もせずに、緊張したような面持ちで過ごしていた。プロジェクトマネージャからは次の指示が出ておらず、とりあえず技術書でも読んで勉強しておいて下さいとのことだった。フロアに配置されていた技術書を適当に持ってきて、各々読み始める。開発者向けの技術書ばかりで、テスターが読んでも仕方ないものばかりだったが、荒川智則は楽しんでいた。だが、そんな日が何日も続くとは予想外だった。プロマネからはいつまで待っても次の指示が出ない。来る日も来る日も定時に出社して本を机に持ってきて、ずっと読んで、定時に本を返して帰るだけの日々。荒川智則は何度も催促に行ったが、変化は訪れなかった。そして一ヶ月が過ぎた。荒川智則は思った。大人の事情があって何人かとりあえず受け入れたけれど、実際は仕事なんかないのじゃないか。とりあえず雇用してやって形だけ義理を果たして切るつもりなんじゃないかと。他の三人もあきらめのような気配を漂わせている気がした。