美人不良債権

一昔前なら、美人であるというだけでずいぶん得をしたものだ。見た目がいいと少し評判にでもなれば、何の能力もなくとも、江戸から使者が来て、大奥へ入れたりした。しかし女性一般の化粧技術の向上や造形技術の発達や適者生存の法則により、最近は美人があまりに増えたため、もはや美人であるというだけではさしたるメリットではなくなった。現代では、ただ美人であるだけでなくプラスアルファが求められる。絵が上手とか歌がうまいとか電車オタクであるとか、何らかの専門技術とセットで初めて価値を帯びる。そうすると美人たちは困ることになる。何しろ美人を維持すること自体がずいぶん高コストだ。学習や思想の鍛錬の時間を削って、美人であろうとする行為へ投資せざるをえない。こうして、美人は文字通り形骸化してしまい、手段が目的へと変じてしまい、不良債権となった。風俗やAV業界では、初美りおんのようにアイドルよりも美しいAV女優なども登場し、もはやただ脱衣するだけでは魅力とならず、風俗嬢やAV嬢の競争も激化した。彼女たちは思ったはずだ。「どうして私はこんなに美人なのに、報われないのか。」と。少々の才能を備えたクリエイターと同種の感情だ。「どうして俺はこんなに出来るのに給料が安いんだ。」というのと一緒だ。いっそのこと美人なんてやめてしまおうか、ともいかない。一度高くなった鼻はもう二度と短くならない。してみれば、美人というだけでは、レイプされる可能性を高め、痴漢されるシチュエーションを増やし、体目当ての男につまみ食いされるばかりで、味方であるはずの女からでさえ敵視され、加齢と共に失っていくばかりのさびしい人生となってしまう。
そんな彼女たちに光明が射した。美人時計天気の天使謝り美人である。
これらのサイトには、ただ美人であるだけで存在価値を認められる女性たちが多く出演している。何の能力もいらない。ただ美人でありさえすればよいのだ。こんな救いはあるまい。
これらのビジネスを考えた人は、不良債権を買い取ってくれたありがたい人たちである。なんという慧眼。このように、不良債権も使いようである。新ナニワ金融道のストーリーもそうだが、ゴミを漁ることで莫大な利益を生むことが可能なのだ。かつては価値を誇ったが、今は没落している。そんなものは世の中にいくらでも転がっている。まさにすすのついたダイヤの原石なのだ。ショーペンハウアーも言っている。ゴミ捨て場をあさって得たとしてもダイヤはダイヤだと。なんら恥じることはないと。
さて、ついさっきニコニコ動画で見つけたのだが、SAWAというアイドルがいるようだ。少し天野月子に似ていて、めちゃくちゃ美人である。私はアイドルには普段興味がないのだが、ちょっと飛びぬけていて心を動かされた。美人がいくら普及しすぎてデフレになっているとしても、本物の美人なら何の問題もないわけだ。ということは、報われないと嘆いているのは、単に至っていないというだけになる。ごく少数ではあるが、本物がいる。本物の美人や本物の天才が。本物がいるところで勝負しようなど考えない方がいいのだ。
ゴミとしてどうせ捨てられるのなら、ダイヤが捨てられていないゴミ捨て場に捨ててもらいたいものだ。