ある雨の夜の物語

くそがっ!あのクソガキめが!!大人を馬鹿にするとひどいめに遭うぞ!くそっくそっ、次にあったら筆下ろししてやる。許さない、絶対許さない。何も逃げることはないじゃないか、そりゃ確かにトンネルの中で、いきなりびしょびしょのカッパ着込んだ変な男から声をかけられたら多少違和感はあるだろうが、逃げることないじゃないか。ああ、ちくしょう。ひでぇ雨だ。もういやだよ。でもまぁ朝まで歩くと書いた以上歩くしかねぇしなぁ。ああ眠いよ。寒いよ。そこからしばらく歩くとコンビニがようやく左手に見えてきた。駐車場は車でいっぱいだ。いくつもの車の中で助手席に女性がいる。コンビニの中はカップルや男たちでいっぱいだ。へっ、ずいぶん楽しそうだなごみどもめ。くそが。僕はびしょぬれで店に入れる状態じゃなかったので、レジにいた男性従業員を手招きして呼び、おにぎりとお茶を適当にもってきてくれと頼んだ。そして金を払って店を出た。そこからちょっと行くと作りかけの高速道路の下に雨を避けられる絶好のポイントがあったので、飯にすることにして腰を落ちつけた。そこで少しいやなことをひらめいた。そういえばさっきコンビニで従業員にお金を渡すとき俺はカッパのポケットから財布を取り出したけど、札を出そうとしたら札がぐしょぐしょだったな。なんでだ?カッパのポケットはこれまでも雨にも耐えれたはずなのに。まずい。まずいぞ。カッパのポケットのボタンを外して中に手を突っ込んで、僕は頭が急に冷えるのを感じた。風呂の湯加減を確かめるために湯船に手を突っ込んだときと変わらない、水しかなかった。僕は大慌てで首に巻いていたぐしょぐしょのタオルで携帯を包んで必死に拭いた。そして電源ボタンを押す。つかない。つかないよ。待ってくれよ。ここで携帯が壊れたら何もかもぱぁじゃないか。ここから朝まで俺は感激ストーリーを奏でるはずだったのに、pmokyみたいにあと20キロ、あと10キロ、あと2キロ、ついたぁ!!ってやりたかったのに、全部ぱぁじゃないか。途方に暮れた僕は、テントを設営してもうそこで寝ることにした。くだらない。もうやめだ!こんなくだらない旅はもうおしまいだ!!