だからお前のコメントはありがたい

このまま寝るところだった。年末肉体派遣のバイトしてたとき、コピー用紙の配送の仕事のとき、コピー用紙うずたかく積んだ台車の車輪をアスファルトにあいた穴に突っ込ませて台車を傾かせ、約1万円分のコピー用紙の角を潰してドライバーさんにぶちキレられて、「殺すぞ」なんて言われちまったことがあった。俺がミスしたのにヘラヘラしてたから我慢がならなかったんだそうだ。そういう顔なんだ仕方ねえだろうがって思ったっけ。状況に混乱しておたおたしてわけがわからなくなったときの表情がヘラヘラに見えちまったようだ。そのあともさんざヘマやらかしてドライバーさんにこてんこてんに搾られた。そのドライバーさんがくれた言葉を思い出した。前も書いたっけ。「お前悪いやつじゃねえってすぐわかったけどほんと使えねえ。そんなんじゃどこも雇ってくれねえぞ。人の何倍も努力しなきゃなんにもできねえぞ」って言われた。他にもその人からはたくさんの言葉をもらった。「人が冷たいのは仕方ねえんだ。みんな自分と自分の家族守るだけで手一杯」とか。その人に何度も怒鳴られてるうちに、いつのまにか涙がこぼれてきて、止まらなくなった。いきな
り大の男が助手席で泣き出したもんだからドライバーさん戸惑ってた。あのとき俺は悔しくて泣いたんだったな。あの頃は精神的に限界だったから、やたらドライバーさんの言葉が身に染みた。うれしかった。その人は俺の何がだめなのかきちんと教えてくれた。俺は俺のことを使えねえ無能だと言われて心底うれしかった。悔しくて情けなかったけど、うれしかった。ドライバーさん最後に配送全部終わって俺を駅まで送ってくれたあと俺が今度飲みに行きましょうよって言ったら、「次また会ったらな」って答えた。俺が、「でもこんだけミスったやつなんてもう次はないですよ」って言ったら、「またこいよ。また乗せてってやる。ミスのことは報告しねえよ」って言ってくれた。俺はもう我慢ならないほどうれしくて、その人三人子供いてみんな女の子だって聞いてたから、写真見せて下さいよって頼んだら、照れながら替えたばかりだって携帯の画面を見せてくれた。一番下の子だった。ドライバーさんひっでえ顔なのに、その子はすっげえかわいかった。その子の顔を目に焼き付けた。こんなに素晴らしい父親をもって幸せだなって思った。ドライバーさんとはそれきりだ。足片
方びっこひいてて背の低い俺よりまだ背の低い人だったが、俺の何倍も力があった。それ以来俺は俺が関わった人に子供がいるとわかったら機会があれば写真見せて下さいとお願いするようになった。このあいだは先輩のお子さんの写真を見せてもらった。こんなにすげえ親父が毎日全霊こめて働いてんのにこの子はなんも知らないのかと思うとかなりもったいない気がした。