坂の途中でばあさんが自転車ごと転倒している所に数人の補助者がたむろっていた。補助者の救急車を呼ぼうかという問いかけにもばあさんは大丈夫というばかり。といって放置して帰るのも気が引けるらしく補助他たちもたちんぼになっていた。
どうもばあさんは坂の途中の墓地に彼岸のおまいりに来たようで目的を達成するまでは帰る気はないらしい。
仕方ないので補助者達に後は自分が面倒を見るからといって帰ってもらった。
ばあさんのしょぼくれた自転車を起こしてやり、よぼよぼの足取りに付き添ってほぼ目の前の墓地までようよう辿り着く。
ばあさんの腰は直角手間まで曲がり、自転車を操縦できていたことが不思議。
目的の墓はさらに上にあるらしく急峻な手すりもない階段がある。
墓の場所を教えてもらい供え物もろもろを墓の手前まで運んでやる。
ばあさんはしきりに感謝し供え物の三割ほどを僕に差し出す。砂糖の入ったぬるいファンタとシュガースポットだらけのバナナをもらっても喜べる年齢ではない。
話が進まないので供え物を受け取る。
せっかくだからばあさんの墓参りを見物してやろうと突っ立っているとばあさんが墓前へ進み出た。
ぬるそうな水の入ったペットボトルをあけて水をかける。
ばあさんは心のなかでしゃべるスキルがないらしく墓に向かってしゃべりだす。
墓の中にいるのはじいさんで、孫が帰ってきてくれていたよと嬉しそうに報告する。
もう少しで自分もそちらへ向かうとか最後のほうは愁嘆場チックになる。
家までちゃんと帰れるのか確認して墓を離れようとしない婆さんを放置して帰った。
手をつないでいるカップルをみて僕もああなりたいと思って
セックスしてるカップルをみて僕もやりたいと思って
子供と手をつないでいる夫婦を見て僕も僕もと思って
墓に水をかけてくれるばあさんを見てそのあまりの可愛らしさに
一人きりで生きていくことなど出来ないことを知った